石北本線、釧網本線

2011.12.10

石北本線には、大きな峠が二つある。中越丿奥白滝間の北見峠と、生田原−金華間の常紋峠である。このうち後者には、大正期に苛酷な労働で大量の死者を出したことで有名な常紋トンネルがあるが、よりスケールの大きな風景が展開するのは前者の方である。北見峠は石狩川と湧別川の分水嶺になっており、石北トンネルを境に川の流れが変わる。なお中越も奥白滝も、一日に鈍行列車が一本停まるだけの駅だったが、二〇〇一年六月三十日に廃止された。

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両駅の間にある上越信号場は標高六百三十四メートルで、北海道で最も高いところにある。釧網本線は、湿原、山間部、そして海岸と、変化に富んだ車窓を楽しめる線である。釧路湿原−茅沼間では、まず左手に原始のままに蛇行する釧路川が見え隠れし、右手に塘路湖、次いでシラルトロ沼が現れる。塘路湖は国道が邪魔をしていて眺めはいま一つだが、シラルトロ沼はそのような爽雑物がないばかりか、人の立ち入りが全くできず、さながら輪郭のはっきりしない沼の中を突っ切って行くような感がある。タンチョウヅルが飛来することで有名な茅沼も、いまは無人駅になっている。知床斜里―原生花園間では、列車が海岸の砂丘地帯に沿って走る。かつては名寄本線や興浜北線からも見えたオホーツク海は、いまでは釧網本線でしか見られない。私が行った六月は、海岸のそこかしこにエゾスカシユリやハマナスが咲いていた。原生花園の駅周辺だけは観光客で賑わっていたが、何のことはない、バスから降りた客が原生花園に行くのに線路を渡ろうとしているだけのことだった。しかし知床斜里からずっと乗っていれば、わざわざ降りるほどの駅ではないという気がしてくる。流氷が押し寄せる冬に、もう一度来たいと思った。