鉄板焼人気の秘密

2012.01.07

振り返ってみると、昨今、私たちはホテル内でコック服姿の料理人を頻繁に見かけるようになったと思う。それまで、厨房の中でひたすら調理に勤しみ、黒子に徹していた彼らは、ブッフェ(バイキング)やオープンキッチンの流行に伴って次第に表に飛び出し、私たち利用者と接するようになった。そうすると、私たちの中にも、おいしさの新しい基準のようなものが生まれた。白衣姿の料理人の手から直接サービスされた料理ほどおいしいものはないだろう、といった価値判断が形成されていったのである。

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そして、そういった新しい傾向の牽引車の一つが、鉄板焼なのである。ここでは、まず鉄板焼に注目しながら、どのようなサービスがおいしさを倍加させているかを見ていこう。鉄板焼は、焼き手と呼ばれる料理人が鉄板の上で素材を加熱調理しながら、サービスも行なうという、一人二役の働きが要求される特異な業態である。その鉄板焼がホテル業界で特に注目され始めた時期があった。バブル経済が弾けて法人需要が減退し、フランス料理の営業力を失ったときである。象徴的な出来事が一九九三年に起きた。帝国ホテルがフランス料理「フォンテンブロー」を鉄板焼「嘉門」に改装したのだ。もちろん、それ以前にも、有名ホテルの中には鉄板焼を開設していたところが少なくなかったが、「あの帝国ホテルが」ということで話題になった。