温泉分析書の掲示は経営者に課せられたほとんど唯一の義務

2011.11.05

ホンモノの温泉を見分けるにあたって、ここまでは「宿」に着目しながら、いくつかのポイントをあげてきました。たとえば料亭に行ったとき、そこで使っている「器」を見れば料理の中身も想像がつくのと同じで、宿の施設や従業員の姿には、経営者の考え方や提供しているお湯の質が滲み出ています。つまりマガイモノの温泉を提供していれば、その「入れ物」もそれに似つかわしいものになるということ。その判断基準を知っているだけで、騙される確率はグンと減るにちがいありません。

[関連情報]
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さて、宿という「器」の見方は以上の話でおおむねわかっていただけたと思いますので、次に「器」の中身、つまり温泉そのものの質に着目して、「ホンモノとは何か」ということを考えていきましょう。温泉の質を知ろうとする場合、多くの人がアテにするのは温泉分析書だろうと思います。いや、これまで温泉に「気分」だけを求めて、お湯の質に深い関心を寄せていなかった人でも、脱衣所などに掲示されている分析書を横目で眺めたことくらいはあるでしょう。源泉の温度、湧出量、叫値、成分、泉質、禁忌症や適応症などを記したものが、都道府県知事が発行する温泉分析書です。意味はわからなくても、これが壁に貼ってあるだけで、「ああ温泉に来たのだな」と感じる人もいるのではないでしょうか。それだけで「温泉気分」に浸ってはいけませんが、温泉経営者のモラルが低下した現在では、分析書の有無は重要な問題です。現行の温泉法はきわめて低いハードルしか設定していないので、分析書という「お墨つき」を御上から得たからといって、それだけで「ホンモノの温泉」とはいえません。でも、その分析書さえ掲示していない温泉施設はもはや論外。その掲示は、温泉施設に課せられたほとんど唯一の法的義務です。その義務さえ果たしていない施設は、それだけで十分にアヤシイといわざるをえません。温泉経営者のモラルが高く、「あうんの呼吸」でホンモノだと信じることができた時代なら、分析書のような書類は「形式的なもの」として無視しても構わなかったとは思います。そんな書類がなくても、昔は温泉はすべてホンモノに決まっていました。しかし現在はさまざまな不祥事が続出し、温泉業界全体が利用者から疑いの目を向けられている時代です。にもかかわらず、信用を得るために最低限の義務さえ履行しない経営者というのは、利用者をバカにしているとしか思えません。