威勢よく汽笛を鳴らして汽車は出発。すぐに木戸山トンネルに入る。しかも1000分の二五(一〇〇〇メートル進む間に二五メートル登るという意味)という勾配なので、C57も苦しそうなドラフト(排気)音を響かせながらの前進だ。そのあと短いトンネルが連続し、長さが一八九七メートルもある田代トンネルへと列車は進んでいく。悪戦苦闘のC57には悪いが、窓の外は何も見えないので少々早い昼食をとることにした。車内で買い求めた「SL弁当」だ。C57の雄姿が描かれた包み紙を開けると幕の内弁当で、ちらしずしや津和野の山菜、川魚しらはや、徳地のゆずみそなど、沿線の味覚が詰まっている。食べ終わらないうちにトンネルを抜けたので、気もそぞろになって窓の外を見やる。下り勾配になってスピードを上げながら篠目に向かう。到着した篠目駅の線路脇には古びた煉瓦造りの給水塔が立っている。とうの昔に使われなくなった廃墟だが、汽車の写真の背景によく使われる篠目のシンボルで、いい雰囲気だ。